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ホルター心電図(24時間心電図)とは?

ホルター心電図(24時間心電図)

ホルター心電図検査は、生活の中で起きる一時的な心臓のトラブルや症状と心電図上の異常との関連を確認するために非常に有用な検査です。検査自体の負担は比較的軽い一方、長時間装着するという特徴があるため、検査期間中の生活スケジュールや注意点(電極をはがさない、症状をメモするなど)をしっかり確認することが肝要です。

ホルター心電図(24時間心電図)とは

  • 携帯型心電計を使用して24時間心電図を記録する検査
  • 日常生活を送りながら装着し、通常の短時間心電図では捉えにくい不整脈や虚血性変化を確認

ホルター心電図(Holter ECG)とは、携帯可能な小型の心電計を使用して、24時間にわたって連続的に心電図を記録する検査手法のことです。通常、病院で安静にしている数十秒から数分程度の心電図検査(安静時心電図)では、不整脈や胸の痛み(胸痛)が発生するタイミングを見逃してしまう可能性があります。一方で、ホルター心電図では、1日を通して発生するさまざまな心拍の変動を捉えることが可能です。

たとえば朝起きたときや仕事中、食後、入眠前後といった生活リズムの中での心電図変化が全て記録されるため、「たまたま検査中には起こらない症状」の原因究明に役立つのが大きな特徴といえます。また、夜間の脈拍の乱れや無症候性の不整脈など、本人が自覚しないまま起きている問題を発見することもあり、心臓疾患の早期発見・早期治療につなげる上で非常に有用です。


検査の目的・役割

  • 不整脈の検出(期外収縮、心房細動、発作性上室頻拍など)
  • 動悸、息切れ、胸の痛み、めまい・失神の原因を探る
  • 虚血性心疾患(狭心症など)や冠動脈疾患の疑いを評価するため
  • 夜間や早朝などの生活リズムに沿った心電図変動を確認

ホルター心電図の最大の目的は、患者さんが日常生活を送る中で生じるあらゆる場面の心電図を長時間記録し、異常が起きるタイミングや頻度を把握することです。たとえば、不整脈の中でも「期外収縮」と呼ばれるものは、多くの健康な人にも生じることがありますが、これが高頻度で出現したり、特定の状況(運動後や起床直後など)で顕著になったりすると、生活の質を低下させたり、長期的には心臓に負担をかける可能性があります。

また、心臓が拍動するリズムに異常が起きる不整脈は、日中起きているときだけでなく、夜間睡眠中にも発生し得ます。通常の短時間心電図では見逃しがちな「睡眠中の異常」も、ホルター心電図ではしっかり記録されます。この睡眠中の心拍変動は、睡眠時無呼吸症候群の有無や重症度を推測する一助になることもあり、必要に応じてさらに詳しい検査に進む場合もあるでしょう。

さらに、狭心症などの虚血性心疾患では、軽い運動や強いストレス、食事など特定の生活シーンで症状が現れるケースがあります。ホルター心電図は、ST変化(心電図上、虚血を疑う波形変化)や心筋虚血を示唆する異常を、1日を通して記録可能です。このように、幅広い場面で心臓の働きを観察できるという特性が、ホルター心電図の大きな役割となっています。


検査の方法・手順

  • 電極を胸部に複数装着し、小型の記録装置(レコーダー)を装着
  • 防水機能の有無によって、入浴の制限がある場合あり
  • 24時間、日常生活を通常通りに送る

ホルター心電図の装着は比較的簡単で、検査日当日に病院や検査施設で行われます。胸部の数か所に電極パッドを貼り付け、これらの電極を細いコードで小型のレコーダー(5cm × 5cm)に接続します。

装置によっては防水機能が付いているものもありますが、通常は電極部分が濡れると正確な計測が困難になるため、入浴やシャワーを控えるよう指示されるケースが多いです。ただし、防水型の電極とレコーダーであれば、簡単なシャワーや入浴が許可される場合もあります。事前に医療スタッフの指示をよく確認し、検査中の注意点を理解しておきましょう。

当院の検査時間は24時間。装着中は普段通りの生活を意識的に送り、症状が出た場合はメモを取ったり、どのような活動中だったか記録すると、後の解析が非常にスムーズになります。解析ソフトでは膨大な心電図データを自動的に解析し、不整脈やST変化といった重大な異常を抽出する機能がありますが、患者さん本人が記録した時間や症状の情報をもとに詳細を医師が確認することで、正確な診断につながります。


主な適応・対象となる症状・疾患

  • 動悸、息切れ、胸の痛み、めまい、失神など不定期に起こる症状がある場合
  • 心房細動や期外収縮、発作性頻拍などの不整脈が疑われる場合
  • 狭心症や冠動脈疾患が疑われる場合
  • ペースメーカー装着後の状態確認や、心不全の経過観察

ホルター心電図は、主に以下のような症状や状況での診断や経過観察に用いられます。

突然の失神や、意識が遠のくようなめまいを引き起こす疾患には、不整脈や一過性の血圧低下、その他心臓や自律神経系の問題など、さまざまな可能性があります。ホルター心電図を24時間装着することで、症状が現れた時間帯の心電図変化を詳細に追跡でき、原因究明に役立ちます。

期外収縮や心房細動(AF)は、脈が飛ぶような感覚や不規則になる動悸の原因として多いタイプの不整脈です。1日の中でどのくらいの頻度で出現しているのか、どんなタイミングで出やすいのか、また、心房細動であれば発作がどのくらいの長さ続いているのかなどが分かると、治療方針の決定に大きく寄与します。

狭心症は、冠動脈が狭窄して血流が一時的に不足することで胸痛や胸部圧迫感を引き起こしますが、症状が数分以内に治まり、心電図異常が一瞬しか現れないことがあります。ホルター心電図の長時間記録によって、症状が出たタイミングのST変化やT波変化などが捉えやすくなり、狭心症の診断や重症度把握に役立ちます。

ペースメーカーやICDを装着している方の場合、プログラム通りに作動しているかどうか、夜間や運動時に適切にリズムをコントロールしているかをチェックするためにもホルター心電図が利用されます。


検査を受ける際の注意点

  • 激しい運動や装置に衝撃を与える行為は避ける
  • 検査中の生活や症状のメモをこまめにつける
  • 肌にかぶれ・かゆみが出た場合は我慢せず医療スタッフに報告

ホルター心電図検査を受ける際、注意すべきポイントはいくつかあります。まず第一に、装置が防水対応かどうかを確認する必要があります。もし非防水であれば、入浴やプールなどは検査期間中は控えます。日常のシャワーも避けるよう指示される場合が多いので、個人の事情に合わせて装着日を調整することが望ましいでしょう。

また、激しい運動をすると、電極シールが汗や動きによって剥がれたりずれてしまう可能性があります。そうなると測定がうまくいかず、データにノイズが入ってしまう場合もあります。特に、検査当日や翌日のスポーツ大会やトレーニングが予定されている場合は、医師や検査技師に相談してからスケジュールを組むことが大切です。

さらに、肌が弱い方やアレルギー体質の方は、電極シールを貼った部分がかぶれたり赤く腫れたりすることがあります。少しのかゆみであれば様子を見ることもありますが、強いかゆみや発疹が生じた場合は放置せず速やかに連絡しましょう。必要に応じて検査を中断したり、低刺激の電極パッドに貼り替えたりする対応がとられます。

そして、検査中は日常生活を極力「いつも通り」に過ごすことが推奨されています。これは、普段の生活リズムの中でこそ起きる心電図の異常を捉えるためです。特に「この時間帯に動悸がした」「階段を上ったときに胸が苦しくなった」などの症状が出たら、時刻や状況、症状の程度をメモし、医師に伝えると診断の精度が高まります。


検査結果とその後の流れ

  • 記録された心電図データを解析して異常箇所を抽出
  • 結果説明の際に、不整脈の種類や頻度、ST変化の有無を確認
  • 必要に応じて追加検査や治療方針の検討が行われる

ホルター心電図の解析は、専門の解析ソフトウェアを利用して行われることが多いです。24時間分の心電図は膨大な量のデータとなりますが、ソフトが自動的にQRS波(心拍の基本的な波形)を検出し、不整脈の有無やST変化などを拾い上げ、医師が最終的に確認して結果をまとめます。

結果説明の際には、「症状と心電図異常のタイミングが一致しているか」が特に重要です。患者さんが「この時間帯に動悸を強く感じた」とメモした時刻と、実際に心房細動や頻脈が記録されている時刻が一致すれば、不整脈が症状の原因である可能性は高まります。逆に、症状があっても心電図上に明らかな異常がなければ、ほかの疾患や要因を探る必要があるかもしれません。結果次第では、追加の検査(心エコー、運動負荷試験、CT検査など)を提案されたり、薬物治療や生活習慣の見直しが行われることもあります。


ホルター心電図以外の検査との比較・組み合わせ

  • 安静時心電図
    • 数十秒から数分程度のみ記録
    • 短時間のため、症状が出ないタイミングでは異常を捉えにくい
  • 運動負荷心電図
    • トレッドミルやエルゴメーターを使用して運動しながら心電図を記録
    • 負荷時に誘発される不整脈や虚血を評価しやすい
    • ただし、24時間の連続観察はできない
  • イベントモニター
    • 症状が出たときだけ記録するタイプの携帯型装置
    • 発症頻度が低い場合や数週間にわたり監視したい場合に使用される

心臓の評価にはさまざまな検査方法があり、ホルター心電図はその中でも「長時間連続で記録する」という特性をもつ検査です。安静時心電図は短時間しか測定しないため、不整脈や虚血発作が短い時間帯にしか起こらない人では見逃しやすいというデメリットがあり、運動負荷心電図も運動中や直後の変化を捉えるには有用ですが、通常の日常生活下での動態は把握しにくい面があります。

また、イベントモニターと呼ばれる携帯型心電図装置は、ホルター心電図より長期間(1~2週間、場合によっては数か月)にわたって装着可能で、症状が起きたときに「録画ボタン」を押して記録を保存する仕組みです。発作が非常にまれな方や、不定期に起こる症状を捉えたい場合には便利ですが、連続記録ではないため、発作に気づかずボタンを押せないとデータが残らないという難点もあります。

このように、目的や患者さんの症状パターンに合わせて、最適な検査法が選択されます。必要に応じて、複数の心臓検査を組み合わせながら総合的な診断を行うのが一般的です。


検査を受ける前のよくある質問

検査中の仕事や運動は通常通り行えますか?

原則可能。ただし装置への衝撃や電極が外れるリスクがある激しい運動は控えたほうがよい。

お風呂やシャワーはどうすればいい?

防水機能が無い場合は基本禁止。防水タイプの場合はシャワーのみ可など、対応が異なるため医療スタッフに確認。

検査に痛みはある?

電極を貼るだけで身体に侵襲は少ない。長時間装着による肌トラブル(かゆみやかぶれ)が生じる可能性はある。

検査費用はどれくらい?

保険適用されるケースが多く、自己負担割合に応じて費用は異なる。詳しくは受診する医療機関に問い合わせ。

ホルター心電図は侵襲性が低く、健康保険の適用対象となるため、多くの病院で実施されている一般的な検査です。ただし、「検査中は仕事に行けないのではないか」「ずっと安静にしていなければいけないのではないか」と不安を感じる方もいます。実際には、基本的に普段通りの生活を続けることが推奨されます。むしろ、いつも通りの活動の中でこそ症状や異常が出ることが多いため、その状態を正確に記録することが診断に直結するのです。

また、検査費用に関しては、医療機関や使用機器、保険の種類によっても差が生じるため、事前に問い合わせるか、受診時に確認することが大切です。多くの場合、3割負担の保険診療下では数千円から1万円程度の範囲で収まる場合が多いとされます(※正確な金額は各医療機関や保険の詳細によります)。


まとめ

  • ホルター心電図は携帯型の小型装置を用いて24時間、日常生活下の心電図を連続記録する検査。
  • 目的は、不整脈や虚血性変化など通常の短時間検査では捉えにくい心臓異常を発見すること。
  • 検査中は普段通りの仕事・生活を続けながら装置を装着し、症状があればメモを取ると診断に役立つ。
  • 防水機能が無い装置の場合は入浴やシャワーが制限されるが、防水対応の機器ならある程度許容される。
  • 肌トラブル(かゆみ、かぶれ)が起きた場合は医療スタッフに速やかに相談する。
  • 解析結果は不整脈の種類や頻度、ST変化の有無など多岐にわたり、追加検査や治療方針決定の重要な手がかりとなる。
  • 安静時心電図や運動負荷心電図、イベントモニターなど他の検査と適宜組み合わせて診断が行われる。
  • 検査費用は保険適用が多いが、医療機関や保険の種類によって変動するので事前確認が望ましい。

医師の判断によっては、ホルター心電図と並行して心エコー検査や血液検査、運動負荷検査などを組み合わせ、総合的に心臓の健康状態を評価していく場合もあります。結果をもとに、不整脈の原因追及や適切な治療計画(薬物療法の開始やペースメーカーの適合評価、生活習慣の改善提案など)が立てられ、心疾患の予防・進行防止に役立つでしょう。

ホルター心電図の装着から解析結果の説明に至るまで、医療スタッフや担当医としっかりコミュニケーションを取り、わからないことや不安な点は遠慮なく相談することが大切です。検査中に体調の変化があった場合や、装置装着に伴う肌トラブルが出た場合なども同様にすぐ報告し、安全かつ正確な検査を行うようにしましょう。これらの点を踏まえ、ホルター心電図検査を通して日常生活に潜む心臓の問題を早期に発見し、適切なケアや治療につなげていくことが期待されます。