
心因性胸痛とは?
心因性胸痛(しんいんせいきょうつう)とは、心臓や肺など身体に明らかな病気がないにもかかわらず起こる胸の痛みのことです。

精神的なストレスや不安など心理的要因によって引き起こされる胸の痛みであり、痛み自体は現実に感じられますが、精密検査を行っても心臓や他の臓器には異常が見つかりません。一見、狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気による痛みに似ることがありますが、その違いは器質的な心疾患が存在しない点にあります。
決して「気のせい」や想像上の症状ではなく、ストレスによって身体に現れる正真正銘の痛みです。
原因

心因性胸痛の主な原因は精神的ストレスや不安といった心理的要因です。
仕事上のプレッシャー、人間関係の悩み、経済的な不安など、強いストレスを感じる場面で突然胸の痛みが発生することがあります。ストレスを受けると自律神経のバランスが乱れ、交感神経が過剰に働くことで心拍数や血圧が上昇し、胸部の血管や筋肉に負担がかかって痛みや圧迫感を引き起こすと考えられています。
また、強い不安により無意識に呼吸が浅く速くなる過呼吸状態になると、血液中の二酸化炭素濃度が低下し、それが胸部の緊張や痛みを誘発する要因になります。さらにストレスや緊張で胸や肩、背中の筋肉が硬直すると、筋肉痛のような痛みや圧迫感として自覚される場合もあります。このように「胸の痛み=ストレス」という図式が成り立つ背景には、複数の身体反応が関与しているのです。
なお、過去に心臓病を患った経験がある人や、心臓への不安が強い人は、些細な体調の変化にも過剰に不安を感じてしまい、それ自体が心因性胸痛を引き起こす引き金となることがあります。
症状

心因性胸痛の症状にはいくつかの特徴があります。痛みの感じ方は人それぞれですが、鋭い痛み、鈍い圧迫感、あるいは胸が締め付けられるような感覚として現れることがあります。痛む場所も一定せず、胸の中央や左側に限らず胸全体に広がる場合もあります。痛みの強さや持続時間にも個人差があり、その時々で変動しうるのが特徴です。
胸の痛みに加えて以下のような症状がしばしば伴います。
- 動悸や息切れ
- 心臓がドキドキしたり息苦しく感じる
- めまい、発汗(冷や汗)
- 吐き気
- 強い不安感や恐怖感
これらはパニック発作の一部として現れることもあり、過呼吸が起きている場合には胸の圧迫感や痛みが一層強く感じられることがあります。一方で、狭心症など心臓そのものの病気による典型的な胸痛では、運動時や階段を上った時に悪化する締め付けられるような痛みが数分続く、といったパターンが多いです。
心因性胸痛では安静時やストレスを感じた瞬間に症状が出現しやすい点で、身体的な心疾患による胸痛とは異なる傾向があります。「痛みはあるのに検査で異常がない」という状態に本人は不安を感じますが、この不安自体がさらに症状を悪化させる悪循環に陥ることもあります。
心理的要因による胸の痛みであっても、身体症状として現れる以上は無視できないつらさを伴うことを理解しておきましょう。
心疾患との鑑別と検査の重要性

心因性胸痛と診断されるためには、まず心臓や肺などに病気がないことを確認する必要があります。
具体的には、循環器内科などで心電図や血液検査、胸部レントゲン写真、心臓超音波検査(エコー)などの検査を行い、狭心症・心筋梗塞など心臓由来の胸痛や、肺の病気、大動脈の病気といった重大な疾患がないか詳しく調べます。
これらの検査で器質的な異常が全く見つからない場合に初めて、心因性(メンタルな要因による)胸痛の可能性が疑われることになります。言い換えれば、心因性胸痛の診断は他の様々な胸痛の原因を除外した上で成り立つ診断です。したがって、胸の痛みを感じたら自己判断で「ただのストレスだろう」と決めつけず、まずは医療機関で検査を受けることが大切です。
特に、強い胸痛に冷や汗を伴う、息苦しさや意識が遠のく感じを伴う場合などは命に関わる疾患の可能性があるため、すみやかに救急受診すべき症状といえます。幸い検査の結果、「心臓や肺には異常なし」と判断されれば命の危険に直結する事態ではありませんので、その時点で初めて心因性の胸痛として適切に対処していくことになります。
心理療法・カウンセリングや生活習慣の見直し
まず患者さん本人が「心臓に大きな問題はなかった」と理解し安心することが重要です。
医師から検査結果について丁寧な説明を受けることで不安が軽減し、それだけでも症状が和らぐことがあります。その上で根本原因であるストレスや不安を和らげる対策を講じていきます。
具体的には心理療法やカウンセリングによってストレスへの対処法を身につけたり、心の緊張をほぐしたりすることが有効です。臨床心理士や精神科医の助けを借りて、不安の原因を整理したり認知行動療法で物事の感じ方を調整したりすると、胸痛の頻度が減るケースもあります。また、必要に応じて抗不安薬や抗うつ薬といったお薬を用いることもあります。これらの薬物療法はストレスや不安感そのものを軽減し、結果的に胸の痛みの発生を抑えるのに役立ちます。
日常生活では生活習慣の見直しも重要です。十分な睡眠と休養をとり、適度な運動やバランスの取れた食事を心がけましょう。ストレスを溜め込みやすい方は、趣味やリラクゼーション法(深呼吸やストレッチ、瞑想など)を取り入れてリフレッシュする時間を作ることも効果的です。実際、ストレス軽減のためにはストレスマネジメント(ストレス発散法)やリラックス法の習得が役立ちますし、運動・食習慣の改善や禁煙といった生活習慣の改善も症状の軽減に有効だとされています。
さらに、症状が長引いて日常生活に支障をきたすような場合には、心療内科や精神科と連携して専門的な治療を受けることも検討しましょう。専門医によるケアを受けながらストレスコントロールを続ければ、心因性胸痛とうまく付き合い、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。
よくある質問
川崎グランハートクリニックでの受診案内
川崎グランハートクリニックでは、循環器専門医が胸痛の診察にあたります。当院では心電図や心臓超音波(エコー)検査をはじめ、心電図など胸の痛みの原因を調べる各種検査を速やかに行うことが可能です。ご来院いただいたその日に必要な検査を実施し、なるべく早く患者様の不安を取り除けるよう努めています。
検査の結果、狭心症や心筋梗塞など緊急の治療を要する心疾患が疑われる場合には、提携する病院と連携して速やかに高度医療機関への紹介を行います。当院からご紹介する患者様には、スムーズかつ手厚い治療が受けられるよう万全の体制を整えております。
