
高尿酸血症・痛風
健康診断で「尿酸値が高い」と指摘されると不安になりますよね。
しかし、痛風の発作を起こしたことがないと「今は症状もないし大丈夫」と放置しがちです。
実は、高尿酸血症(血液中の尿酸値が高い状態)そのものには自覚症状がなくても、ある日突然に足の親指の付け根が赤く腫れて激痛に襲われることがあります。これは典型的な痛風発作の初期症状で、高尿酸血症はまさに“いつ爆発するか分からない時限爆弾”のようなものです。
高尿酸血症・痛風の症状や原因、放置するリスク、治療法について、40代の働き盛りの男性にも分かりやすく解説します。不安を解消し、将来の健康を守るための参考にしてください。
高尿酸血症・痛風の主な症状(痛風発作の初期症状など)
- 高尿酸血症の症状
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高尿酸血症そのものでは、基本的に目立った自覚症状はありません。多くの場合、健康診断の血液検査で尿酸値の高さを指摘されて初めて気づきます。痛風を発症していない段階(無症候性高尿酸血症)では症状がないため見過ごされがちですが、この時期に生活改善や必要な治療を開始して尿酸値を下げることで、将来的な痛風発作のリスクを減らせます。
- 痛風の初期症状
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高尿酸血症を放置し尿酸が関節に結晶として蓄積すると、ある日突然に痛風発作が起こります。
典型的な痛風の初期症状は 足の親指の付け根の激しい痛み です。多くは夜間から明け方にかけて発症し、痛みで目が覚めることもあります。また、足首や膝などの関節にも痛みや腫れが出ることがあります。
痛みの部位は赤く腫れ上がり熱感を伴い、少し触れただけでも飛び上がるほど痛いのが特徴です(「風が吹いただけでも痛い」と表現される激痛です)。発作時は靴を履くことも困難で、数日間は歩行もままならないほどです。
通常、痛みは治療しなくても1~2週間程度で治まりますが、一度発作が起きると再発しやすい点に注意が必要です。最初の発作は一時的でも、放置して尿酸値の高い状態が続くと発作を繰り返すごとに症状は強くなり、間隔も短くなっていきます。慢性的になると関節に痛風結節(尿酸の結晶の塊)ができたり、関節の変形をきたすこともあります。
高尿酸血症の原因(生活習慣・食事・体質など)
- プリン体の多い食事や飲酒
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高尿酸血症の最大の原因は、日頃の生活習慣、とりわけ食事内容にあります。尿酸の元となる「プリン体」という物質の過剰摂取により尿酸値は上昇します。プリン体は体内でも生成されますが、食品ではレバー(鶏・豚・牛)や魚の干物、カツオ・イワシ、エビ・カニ、白子などに多く含まれます。
これらを頻繁に大量に食べていると尿酸が増えやすくなります。アルコールも大きな要因です。特にビールはプリン体を多く含むため要注意ですが、それ以外の酒類も油断できません。アルコールそのものが肝臓での尿酸産生を増やし、腎臓からの尿酸排泄を妨げてしまうため、種類を問わず過度の飲酒は尿酸値を上げる原因になります。
- 過食・肥満・運動不足
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食べ過ぎや肥満も高尿酸血症を招く代表的な要因です。体重が増えると体内で尿酸が産生される量が増え、さらに肥満に伴うインスリン抵抗性などが腎臓からの尿酸排泄を低下させます。
また運動不足の生活だとエネルギー過多で太りやすい上、血行が悪くなり尿酸の代謝も滞りがちです。逆に急激で激しい運動も注意が必要です。無酸素運動や激しい筋トレは一時的に乳酸が増えて尿酸の排泄を妨げ、尿酸値を急上昇させることがあります。適度な有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギング、水泳など)を習慣づけることが大切です。
- 体質(遺伝的要因)
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「お酒も控えているのに尿酸値が高い」という方は、生まれつきの体質も考えられます。尿酸の排泄に関わる遺伝子の違いにより、腎臓から尿酸を出しにくい体質が遺伝することがあります。実際、親子で痛風を発症しているケースもあり、家族に高尿酸血症の人がいる場合は注意が必要です。
男女差も大きく、女性より男性の方が高尿酸血症になりやすい傾向があります。これは女性ホルモンに尿酸の排泄を促す作用があり、閉経前の女性は尿酸値が上がりにくいためです。40代前後の男性で尿酸値が高めと言われたら、体質的に尿酸がたまりやすい可能性も踏まえて早めに対策することをお勧めします。
放置するリスク(痛風、腎障害、尿路結石、生活習慣病との関連など)
高尿酸血症を「症状がないから」と放置していると、将来的に様々な深刻な合併症を招くおそれ。主なリスクとして次のようなものが知られています。
- 痛風(痛風関節炎)
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高尿酸血症を放置するとまず挙げられるのが痛風発作です。前述したように激痛を伴う関節炎で、一度発症すると繰り返す可能性が高まります。発作を重ねるごとに炎症はさらに強まり、治まるまでの期間も長引きます。長期にわたり放置すれば、関節内に尿酸塩の結晶塊(痛風結節)が蓄積して関節が変形することもあります。痛風になってしまうと、その後は基本的に長期的な尿酸コントロールの治療が必要になってきます(「風が吹いても痛い」激痛発作を繰り返さないためにも継続治療が重要です。
- 腎機能障害(痛風腎)
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尿酸の結晶は関節だけでなく腎臓にも蓄積しやすく、腎臓のフィルター機能を傷害します。高尿酸血症の状態が長く続くと、腎臓に尿酸塩が沈着して慢性的な炎症を起こし、腎臓の機能低下(痛風腎)を招くことがあります。
初期の腎障害は自覚症状がありませんが、進行すると体にむくみが出たり貧血・息切れ・倦怠感・夜間頻尿といった症状が現れます。さらに腎機能が30%以下に低下した状態を「腎不全」といい、この段階になると人工透析が必要になる可能性があります。高尿酸血症は慢性腎臓病(CKD)のリスク因子の一つでもあり、腎機能が低下してくると尿酸が排泄されにくくなるため、放置により腎障害が悪化する悪循環にも陥りかねません。
- 尿路結石
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血中の尿酸が高い状態が続くと、尿中に排泄される尿酸も増加します。尿が濃くなったり酸性に傾いたりすると尿酸が結晶化し、腎臓や尿管に尿路結石(尿酸結石)を形成することがあります。
尿路結石ができると、腎臓から尿管にかけて脇腹や背中に激しい痛みが走ります。その痛みは「七転八倒するほど」と表現され、場合によっては救急搬送されることもあるほどです。小さな結石なら水分をとって自然排出を待つこともありますが、大きい場合は体外衝撃波で砕石する治療や内視鏡手術が必要になります。尿路結石は再発率も高いため、高尿酸血症の人は水分摂取や食事管理で結石予防に努める必要があります。
- 生活習慣病(メタボリックシンドローム)との関連
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高尿酸血症は高血圧症、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病としばしば併存します。実際、痛風患者では肥満や高血圧、耐糖能異常(糖尿病予備軍)を合併する割合が高いことが知られています。これらの生活習慣病があると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気のリスクも高まります。
高尿酸血症それ自体も心血管疾患の独立したリスク因子になり得るとの報告もあり、尿酸値が高い人は血圧や血糖値など含めて健康管理に一層注意が必要です。言い換えれば、尿酸値の管理は痛風予防のみならず生活習慣病全般の予防にもつながるのです。
よくある質問
受診の案内
川崎グランハートクリニックは、痛風・高尿酸血症の早期発見と予防に力を入れています。健康診断で尿酸値の異常を指摘された方や、「このままだと痛風になりそうで不安」という方は、お気軽に当クリニックにご相談ください。
検査結果を丁寧に説明し、患者様それぞれのペースに合わせた治療・指導プランをご提案いたします。痛風発作の激痛を未然に防ぎ、将来にわたって健康な生活を送るお手伝いをさせていただきます。早めの受診で、一緒に高尿酸血症のケアを始めましょう。
